◆ 逃亡 ◆
恐いといって泣いた
僕は汗だくで走りながら
恐いといって泣く人形のような人の波を通り過ぎた
意識が 朦朧とするんだ
他者に感情があるなら
どうして僕にはそれがわからないんだろう
みんな人形なんだ
中身なんて空っぽで
首をへし折っても命はなくならない
だって、もともとないんだから
そうやって生きていくんだ
これからもいままでも
それがどれ程異様で奇妙で悲劇的なのか
僕にはわからない
他者が きっとそう思うだけだ
無表情で泣き続ける人形たちが勝手に決めてくれる
僕は汗だくになって走りながら
赤い水の海に横たわり
無残に破壊された人形を ちらりと眺めた
轢き逃げよ
人形のひとりが叫ぶ
走り去った車はとうに見えない
黒い車だった
今日も 何事もなく過ぎていく
僕は走る
逃げるように…
2008.09.22UP